ボクたちネコのお人形のコンビ

追跡


ボクらネコのお人形のコンビ、真夜中のライダーだ。

ハンドルをしっかり握りしめ、赤ネコは一心に前方を見つめる。

でも青ネコはサイドカーの硬い座席でさっきから目をつむっている。何か考え事?イヤ、ちょっと寝ているだけ。

マシンは快調。赤ネコはご機嫌。でも顔に出さず、目は真剣。風防グラスの中で二つの点になっている。
プルシャンブルーのリボンが風になびいて、ちょっとわずらわしい。

「オッと」今度はすごいバウンド。
ハンドルをとられるな!

青ネコは座席から跳び上がり、一回転したらちょうど着席。そして睡い目をこすると、またおやすみ。

「誰かな?」
ーオロン、オロン、オロンー
ピタピタと赤ネコはさらに近づく。
「なんだ、ありふれたただのモグラ君じゃないか、この前の」

「オロンオロン、……エ? ええ、……オロン」不思議とモグラは泣きやんだ。
「ウン。……それでどうしたのかナ?」
「エ? ああ、つまり盗まれちゃったんです」
「ウン。……それでドーしたのかナ?」
「……エ? ええ、……その、盗まれたんです」
「ウン」
「ええ」
「うん。……それでナニをぬすまれたのかナ?」
「……ミミズのいっぱい入った……、……箱ごと全部……、オロン」

しばらくして、赤ネコはバイクにまたがり風防眼鏡をかけた。出発の合図だ。
青ネコとモグラはサイドカーに重なるように乗り込んだ。モグラの肩掛けカバンがわずらわしいと青ネコは思っている。それでなくとも座席はひどく狭いのに。

さあ出発だ。ドルルルルル。

こうして追跡劇の幕開けだ。真剣に前方を見つめる風防眼鏡の中の四つのブリキの目と二つの×。
ヘッドライトを頼りに、執拗に犯人のトレイルを追う。

アッ、ぬかるみに突入だ。蹴とばせ、泥と水、構わずハネ上げろ。
赤ネコは風防眼鏡に飛び散った泥を片手で拭う。あまりよく見えない。仕方なくオデコに上げた。顔に浴びてもモグラはへっちゃら。だっていつも土の中。キョトンとして、ほとんど見えない前方をなんとなく見つめている。せっかくの黄色のリボンに泥がハネた青ネコは、またまた不機嫌の湖に沈んだ。