今頃になって、ボクらは過ぎ行く夏を惜しみ、あの懐かしい日射しを求め、森のつきる所、草原のただ中に躍り出る。しかし、次から次へと流れ来る雲の一団に陽はたちまちさえぎられ、草原はあたり一面まだらに輝くだけだ。まるで灰色の海に浮かぶ小さな島のように輝く草地があれば、ボクらは一目散に走って行く。
 ところがあと数歩で届くというところで、光の島は沈んでしまう。雲の影に入るボクの白い毛はその輝きを失って、うす汚れた灰色だ。そして、この曇った草原の一角に咲く菫青色の矢車草の一群。しかしそれは残された者への花束にすぎない。

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