2 サマルカンド
中学校の地理の時間、地図帳を開いて、目は授業とは関係のない地域を彷徨い始める。聞いたことのない都市の名が続く……ブハラ、タシケント、サマルカンド。サマルカンド!なんて美しい響きなんだろう。この遠くの都市を訪ねる時がやって来ようなどとは思いもしなかった。

乗り継ぎのため、タラップを下りてタシケント空港の焼けるようなアスファルトの上に降り立つと、熱い空気は羊肉の匂いがする。中央アジアに来たことを体感する。
サマルカンド行きの飛行機にはまずツアー客、その後にじゃがいもやタマネギをいっぱいに入れたバケツを両手に持って現地の人が乗り込んでくる。通路に止まったままで進まない。ソ連では飛行機もバス感覚で立ち乗り?!と思ったけれど、結局みんな席に着いた。隣には大きな体格の現地の人が座った。大きな腕時計をしている。1時間程すると、この腕時計の文字盤と窓の外に見えてきた地上の光を交互に指さして、時刻通りの到着を知らせてくれた。サマルカンドに着いたのは夜だった。
サマルカンドの日程は遺跡や歴史的建造物の見学が目白押しで、バザールは予定にないという。バザールには絶対行ってみたい。それで翌朝は早起きして、市内観光の集合時刻前にバザールに出掛けることにした。
バザールは修復中の美しい廟ビビ・ハヌイムに隣接してあった。テントの下にはスイカやメロンが山積みになっている。屋根の下には豊富な野菜や香辛料。肉屋には羊の骨付きもも肉がぶら下がっている。平たい帽子にどてらのような形のチャバンを着た男性たち。女性たちの着ている鮮やかな色彩のワンピースは矢がすり柄の伝統的な絹織物だ。緑色の粉を売っている人がいる。鼻の穴に詰め込むしぐさ。嗅ぎたばこらしい。奥の方に人だかりがしている。近づいて見ると闘鶏をしている。「ここは、あんたがたの来るところではない」というような身振りをされて、退散した。
サマルカンドの朝
バザールへ向かう道
バザールの風景
市内観光は、モスクや神学校の建物が広場を囲んでコの字型に並ぶレギスタンから始まった。ブルーを基調にしたタイル装飾が美しい。広場の隅に小さな台を置いて陶器を売っている人がいる。ブルーの手描き模様の大きな皿を買った。重くて大きな皿を抱えてレギスタンの見学。この皿は今でもプロフ(中央アジアの炊き込みご飯)用に活躍している。
バザールから見えるレギスタン
レギスタンのタイル
レギスタンの広場で買った皿
廟が立ち並ぶシャーヒ・ズィンダもブルーのタイル装飾が美しかった。
修復されずに、タイルが剥落したままの所もあるが、それも趣がある。
サマルカンドはタイルのブルーが美しい町だった。
シャーヒ・ズィンタのタイル
グル・エミルのチャイハネ
シャーヒ・ズィンタの木彫のドア
翌日はブハラ。
3 ブハラ へ続く