11. WORLD AFTER HISTORY
BORIC KOVAC & LA CAMPANELLA

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2001 年「ラスト・バルカン・タンゴ」、
2003 年「時の終わりのバラード」、
そして、2005 年の「歴史の後の世界」。
世界の悲しみは、ますます深くなっていくようだ。

同じようなメロディーが聞こえる。
しかし、前作とは微妙に異なるニュアンスを添えて。
世界の悲しみは、深くなるばかり。
絶望の底から飛び立つ術はある……?ない……?
ただひとつ、自分自身を壊されないようにすること。
……君が知るべきただひとつの事、それは私が君を愛しているという事……

違う音も聞こえる。
新しいメンバーのギターのスペイン風の響き。
みんなで歌っている、いかにもバルカン風の歌。
ユーゴスラビア時代のエミール・クストリッツァの映画「パパは出張中」で、みんなが歌っていたような。
悲しみを共有する仲間よ、せめて、しばしこの夜を楽しもう!
喜劇の終わりに、
悲劇の終わりに、
悲惨の終わりに、
デモクラシーの終わりに、
歴史の終わりに。

バルカンと極東のこの島国では、状況は随分と異なるだろう。
何故こんなにも共感するのだろう?
ここでは、
喜劇の始まり、
悲劇の始まり、
悲惨の始まり、
デモクラシーの始まり?終わり?
歴史の始まり?終わり?

この共感はグローバルなものだ。
バルカンの悲しみ、チェチェンの絶望、パレスチナの悲劇、イラクの悲惨、ニホンの喜劇……
世界は崩壊しつつあるけれど、
悲しみを共有する仲間よ、せめて音楽を楽しもう!
崩壊しつつある世界を見つめながら聴く音楽の悲しみと喜ばしさ!

ボリス・コヴァーチとその仲間ラ・カンパネッラに乾杯!!
そういえば、彼らは今、故郷の街のかつてのワイン貯蔵庫を拠点に活動しているのだった。
ワインの代わりに音楽で乾杯!         

Text by Mariko Machida 2005.10


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