パレスチナの若き兄弟、サミール・ジュブランとウィサーム・ジュブランのウードのデュオが出た。(ウードはリュートや琵琶の原型でもある、アラブの弦楽器)
この cover の写真の少年は、スケボーで遊んでいるのではない。 占領軍イスラエルが自治区を封鎖するのは、しょっちゅうの事。 最初、この写真に違和感を覚えた。アメリカの少年が遊んでいるように見えたから。 聴いてみて、写真のメッセージが、音楽のメッセージそのものであることが分かった。 イスラエルによる理不尽な占領と迫害そして虐殺。その苦しみ、言い様のない悲しみ。泣き叫ぶのでもなく、喚き立てるのでもなく、優しく典雅なウードの音は息をのむほど美しく、秘めた情熱と張りつめた悲しみはあくまでも静謐である。 かつて、迫害され、ゲットー閉じ込められ、虐殺されたユダヤの人々は、様々な美しい音楽を作り出し、そして、決して滅ぼされることはなかった。 今、迫害を受け、巨大な壁に囲まれ、虐殺されているパレスチナの人々も、これらの素晴らしい音楽とともに、決して滅ぼされはしない。 ジュブラン兄弟は、現在イスラエルの町となっているナザレ出身。 この辺の事情は、同じナザレ出身のエリア・スレイマン監督の映画「D.I.」を見ると良く分かる。 サウンドトラックは、アラブの往年の大歌手から、バングラディッシュやブラジルのテクノやクラブミュージックなどなど。 「笑いの爆弾」というコピーで公開されたが、笑うどころではなかった。ひきつった笑いを笑えるのは、自らを笑うしかない当事者だけかもしれない。 それでも、あえて、D.I.を見て、笑え! Text by Mariko Machida 2003/8 |
|