突然の晴れ間。偽りの秋の日。
ささやかな好天を狙って、しばらく振りに、ボクは唐檜(とうひ)の森へと下って行った。
                  ……… ………
 雪原のまん中あたり、二本の棒のようなものが突き出ていた。浅い雪に跡をつけながら近づくと、それは枝の折れた白樺の幼木だった。
 あたりには誰もいなかった。
 取り囲む森は静まり返り、雪原を吹き渡る弱々しい風が、唐檜の深い森へ消えて行った。

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