2. メネメン

 ボクはメネメンを作りながら思い出す。
 あのイスタンブールの幾多の坂道を。街灯もまばらな薄暗い夕暮れの通りを。
 魚の嫌いなカモメ、船を数えるときはあの哀しげな目を見せないロバ、謎の占いウサギ。
 それぞれ自分の領分を持っていた。
 そういえばボクは彼らの名前すら知らない。
 再び会うこと、めぐり会うことはあるのだろうか? 

 オムレツは半熟が肝腎。そしてシシトウを入れる。
 ああ、ボクはあの街を無意識の中でもう一度彷徨っている。
 ボクは我知らずオムレツをかきまわす。
 トマトやシシトウが位置をかえ、褪せた市街図の中のモスクやパラスのように散らばった。
 ボクは全てを思い出そうとする。

 そしてできあがったメネメンは半熟をとっくに通り越している。

 火にかけたら思い出にひたらないで作るメネメン

バター 大さじ2分の1
トマト2分の1〜1個 または水煮缶トマト1~1.5個 ざく切り
シシトウ 4〜5本 1㎝位にカット
卵 2個
塩・こしょう
パセリみじん切り 少々

 フライパンにバターを溶かし、トマトとシシトウを入れ、塩・こしょうする。
 トマトの水分が出て少しトロッとしてきたら、とき卵を注ぎ、よく混ぜる。
 卵が固まる直前に火を止め、パセリのみじん切りを散らす。

3. ボルシチ