遅ればせながら ラクダネコと新年のご挨拶 
 

 ラクダネコの魂は慣れてしまった、
 砂漠にも、重い荷物にも、殴られることにも。
 だが、それでも生きることは素晴らしい、
 生きていれば、僕らにだって何か値打ちがある。

    アルセーニー・タルコフスキー「駱駝」より
      駱駝を勝手にラクダネコに改変
      絵は町田純

ラクダネコの絵は、塾の生徒たちのために町田純が随分前に描いたものです。
私たちは小さな学習塾で小・中学生を教えて、生活の資にしていました。オリジナルのプリントで教えていて、こなしたプリントの束が一杯になると努力賞として純の絵のノートがもらえます。
そのノート用の絵は「ネムイドン」「泳げないワニ」「モグラペンギン」「真面目だけれど足が汚れているネコ」「カイジュウの行列」など12種類あって、そのなかの一つが「ラクダネコ」でした。
その説明には、こうあります。

「ラクダネコは中央アジア、アラル海の南、カラクム砂漠に住んでいる。君もこの砂漠を2、3日歩けば、このかわった猫の糞ぐらいは見つけることができる。君が砂漠中で迷っても、決してこのネコにオアシスへ行く道など尋ねてはいけない。たいてい反対のことを言うからだ。もっともこのネコにとっては、『旅人にわざと試練を与えているのだ』という手前勝手な考えがあるらしい」

この意地悪そうなラクダネコにはグルジェフというモデルがいました。1866年、ロシア・アルメニア・トルコの国境近くの町に生まれた神秘思想家です。彼は意地悪ではありませんでしたが、弟子が精神的に依存することを許容せず、難題を課しては揺さぶり続けたそうです。機会があれば、奇想天外な自叙伝「注目すべき人々との出会い」を読んでみて下さい。同名のピ−ター・ブルック監督の映画もお勧めです。


                 
2023.1  Mariko Machida
今年もどうぞよろしくお願いします。
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